序 章 「敵艦見ユ」の舞台裏
1 運命の電報・決意のZ旗
2 東郷平八郎の本心を問う
3 新史料と現地調査から見た日本海軍の情報戦略
第1章 二〇世紀初頭の世界と運輸情報通信
1 情報通信事情の過去と現在
2 世界に広がる電信網の発達
3 無線電信の発明と開発
4 交通機関の状況
第2章 日本海軍の情報活動
1 海軍軍令部第三班
2 駐ロシア海軍武官団
3 スエズ運河への海軍駐在員の派遣
4 日露開戦に至る海軍の準備
5 欧州駐在の海軍武官
6 オデッサ──飯島領事の活躍
7 外務省政務局
8 バルチック艦隊の出立
9 駐独瀧川海軍大佐の暗躍
第3章 日英同盟の諜報協力
1 日英同盟の誤解
2 日英諜報協力への歩み
3 海軍武官暗号──イギリス暗号技術の導入
4 伊集院五郎とフィッシャー──無線技術の供与
5 日本は世界中に張り巡らされたイギリス有線通信網を利用できるのか?
6 英海軍情報部
7 日露戦争中の日英同盟
8 潜水艇情報
9 駐英公使館の情報元──『ザ・タイムズ』、ロイター通信、ロイズ保険組合
第4章 ヨーロッパでの情報収集
1 バルチック艦隊の出立を探る
2 デンマークへの投錨
3 迷走する情報収集
4 ドッガー・バンク事件の余波
5 ヴィーゴとタンジール──赤羽公使の奔走
6 トルコ海峡問題とイスタンブールの中村商店
7 フェリケルザーム支隊を追え
8 スエズ運河の密使──外波中佐の潜入
9 新たな艦隊の派遣
第5章 インド洋・東南アジアでの探索
1 アフリカ西岸への寄港
2 ノシ・ベ島──ロシア艦隊の地獄
3 マダガスカルの赤崎伝三郎
4 シンガポール──三井物産との協力
5 森大佐の蘭領インドシナへの潜入
6 日本海軍の待ち伏せ偽装工作
7 バルチック艦隊のシンガポール通過
第6章 仏領インドシナでの攻防
1 彷徨するロシア艦隊
2 南シナ海での情報戦
3 英ジャーナリストの特ダネ
4 ケ・ドルセーでの対決
5 翻弄される日本外交
6 イギリスによる仲裁
7 仏領インドシナからの出立
第7章 日本海海戦へ向けて
1 南シナ海北部と台湾海峡
2 上海における海軍情報網の構築
3 所在表と艦影図──情報収集の成果
4 対馬海峡──海軍望楼と「碁盤の目」の索敵網
5 津軽海峡と宗谷海峡の監視
6 北進か待機か?──連合艦隊司令部の苦悩
7 敵艦発見の第一報
終 章 情報戦は失敗か?
1 東郷長官の自信
2 日本海海戦とその結果
3 海戦後の備え──竹島の望楼と海底ケーブル
4 情報収集の経費
5 ロシアの敗因
6 情報と勝利の因果関係
注
参考文献
あとがき
図版出典一覧
年表
索引
稲葉 千晴(いなば・ちはる)
1957年、栃木県小山市生れ。早稲田大学大学院文学研究科西洋史専攻博士課程前期修了。早稲田中学・高校教諭、東洋英和女学院短大助教授を経て、名城大学都市情報学部教授。著書に『明石工作──謀略の日露戦争』(丸善ライブラリー)、『暴かれた開戦の真実:日露戦争』(東洋書店)、『すぐにつかえる日本語─フィンランド語─英語辞典』(国際語学社)など。共著に『マツヤマの記憶──日露戦争100年とロシア兵捕虜』、『日露戦争研究の新視点』(いずれも成文社)など。訳書にコンスタンティン・プレシャコフ著『日本海海戦悲劇への航海──バルチック艦隊の最期』(上下巻、NHK出版)などがある。