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「神話学序説」書影

神話学序説

表現・存在・生活をめぐる哲学

A・F・ローセフ/大須賀史和訳


ISBN4-915730-54-9 C0010
四六判上製 322頁
定価(本体3000円+税)
2006.05

 スターリン体制が確立しようとする一九二〇年代後半、ソ連に現れた哲学の巨人ローセフ。革命前「銀の時代」の精神をバックグラウンドに、ギリシア哲学とロシア正教、ソロヴィヨフ以降の宗教哲学と二十世紀初頭の西欧哲学に通暁した著者が、革命の時代に抗いながら提起した哲学的構想の一つ。

 ローセフは我々の日常生活のみならず、我々の存在する「世界」そのものを作り上げる「神話」の構造を、対話的=弁証法的観点から探求した。それは単なる「神話」の暴露でも、讃美でもなく、文学などの表現領域や人格の論理構造をめぐる問題を巻き込みながら、存在=ありようの本源に迫った知的探求の精華である。

 それは弁証法的唯物論という「公認」の哲学を、はるか後方に追いやる緻密さとウィットに富んだ独自の宗教哲学的存在論であり、ソ連体制初期の思想状況の多様性を物語る歴史的遺産でもある。


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